ルース・エドガー あなたは人間の本性を見抜けるかー。

サンダンス映画祭正式出品、アトランタ映画批評家協会賞、サンディエゴ映画批評家協会賞、インディペンデント・スピリット賞

誰からも称賛される17歳の高校生ルース。完璧な優等生か?恐ろしい怪物か?

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6月5日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷他全国公開

INTRODUCTION

 バージニア州アーリントンの高校生ルース・エドガーは文武両道に秀で、スピーチやユーモアのセンスにも長けた17歳の少年だ。アフリカの戦火の国で生まれた過酷なハンデを克服し、さまざまなルーツを持つ生徒たちの誰からも慕われている彼は、自由の国アメリカで希望を象徴する存在へと成長した。そんなルースがある課題のレポートをきっかけに、同じアフリカ系の女性教師ウィルソンと対立し、彼の順風満帆の日常が大きく揺らぎ出す。ルースが危険な過激思想に染まっていて、同級生への性的暴行事件にも関わったのではないかというウィルソンの衝撃的な“告発”は、ルースの養父母である白人夫婦エイミーとピーターの胸にも疑念を生じさせていく。はたしてルースは何者なのか。本当に“完璧な優等生”なのか、それとも世間を欺く“恐ろしい怪物”なのだろうか……。
2019年のサンダンス映画祭でプレミア上映されるや批評家の絶賛を博し、全米の賞レースで20を超える賞のノミネートを達成。その年の最も優れた独立系作品を選定するインディペンデント・スピリット賞でも監督賞、主演男優賞、助演女優賞の主要3部門に名を連ねた『ルース・エドガー』は、深刻な矛盾をはらんだアメリカ社会の現状をリアルにえぐり出し、謎のベールに覆われた人間という存在の本質に鋭く切り込んだヒューマン・ドラマである。模範的な若者として学校や地域の誰からも愛され、称賛される少年の“知られざる真実”をめぐって展開するサスペンスフルなストーリーは、観る者の好奇心をかき立てるにとどまらず、私たちの内なる潜在意識を揺さぶり、先入観を根底から覆していく。

 『ルース・エドガー』の最もユニークな特徴は、全編出ずっぱりの主人公ルースが真意不明のミステリアスな存在であることだ。成績優秀なスポーツマンで、誰とでも分け隔てなく接するオープンな人柄の持ち主。アフリカ系の移民であり、白人の養父母の愛に育まれてトラウマを克服したルースは、若きバラク・オバマの再来とも称され、まさに現代のアメリカン・ドリームそのものだ。
しかしJ・C・リーの戯曲「Luce」の映画化である本作は、観る者に強烈な問題提起を突きつけてくる。ルースの“完璧な優等生”というイメージは、彼に期待する両親や校長らが一方的に押しつけたものではないのか。それとは真逆の“恐ろしい怪物”という見方も、極端に偏った思い込みなのではないか。人種、容姿、性別、階級、学歴、思想、信仰……いったい人間の“価値”とは、何によって決定されるのか。アメリカという国の歴史や政治をも取り込み、その理想と現実をあぶり出した本作の懐の深さに、誰もが感嘆せずにいられないだろう。

 ルース役に抜擢されたのは、終末スリラー『イット・カムズ・アット・ナイト』における迫真の演技で注目されたケルヴィン・ハリソン・Jr.。同作品のトレイ・エドワード・シュルツ監督と再び組んだA24配給の青春映画『WAVES/ウェイブス』でも主演を務め、今まさしくブレイク中の新星が、まだアイデンティティが確立されていない17歳の少年の葛藤を生々しく体現する。
ケルヴィン・ハリソンJr.を囲む主要キャストには、輝かしい受賞歴を誇る実力派が配された。プライベートに問題を抱えながら、ルースと激しく敵対する教師ウィルソンを演じるのは、『ドリーム』『シェイプ・オブ・ウォーター』のオクタヴィア・スペンサー。また、ナオミ・ワッツとティム・ロスが愛する息子への思いがけない疑念に動揺するリベラルな夫婦に扮し、観客の視点を担う役どころに説得力を与えている。
オバマ大統領の時代に上演されたJ・C・リーの戯曲に感銘を受け、監督・製作・共同脚本を務めたのは『クローバーフィールド・パラドックス』のジュリアス・オナーである。自らもナイジェリア出身のアフリカ系移民であり、物語の舞台となったバージニア州アーリントンで育った新鋭監督が、洗練されたシャープな語り口、繊細にして多面的な心理描写を披露。その絶え間なくスリリングで心揺さぶる映像世界は、観る者を白熱のクライマックス、深い余韻を残すエンディングへと誘い、私たちそれぞれの想像力によって変わる“真実”を浮かび上がらせるのだ。

STORY

ルース・エドガー

 バージニア州アーリントンの高校に通うアフリカ系アメリカ人のルース・エドガー(ケルヴィン・ハリソン・Jr.)は、文武両道の模範的な優等生だ。陸上部で活躍し、討論部の代表として全米大会に出場したこともあるルースは、さまざまなルーツの生徒が通う学校で誰からも慕われている。戦火の国エリトリアで生まれ、7歳の時にアメリカへ渡ってきた彼は、養父母となったエイミー(ナオミ・ワッツ)、ピーター(ティム・ロス)のエドガー夫妻から現在の名前を授かり、幼少期に戦場へ駆り出された悲惨なトラウマを克服した。今や若きバラク・オバマを彷彿とさせる聡明な若者に成長し、将来を嘱望されるルースは、人種のるつぼであるコミュニティの希望の星となっていた。

 そんなある日、エイミーはベテランの歴史教師ハリエット・ウィルソン(オクタヴィア・スペンサー)から学校へ呼び出される。息子のルースが歴史上の人物をテーマにした課題のレポートで、アルジェリア独立運動の革命家フランツ・ファノンを取り上げ、彼の過激な思想について記したというのだ。そして、その内容を問題視したウィルソンはルースのロッカーを捜索し、危険な違法の花火を発見したという。息子のプライバシーを無視して調査を行ったウィルソンに反発するエイミーだったが、不安に駆られて夫のピーターに相談することに。「たかが花火だ。心配するな。息子がテロリストだとでも?」と事もなげに答えるピーター。

ルース・エドガー

 帰宅したルースと夕食を囲んでその話題を向けると、ルースもウィルソンへの微妙なわだかまりを抱いていることが判明する。ウィルソンは教育熱心な反面、生徒たちにレッテルを貼る傾向があり、彼らを従わせて自分の政治的な主張に利用しているというのだ。「僕に与えられた役は“悲劇を乗り越えた黒人”で“アメリカの良心の象徴”なんだ。責任を感じて重荷だよ」。

 その後もルースとウィルソンの緊張関係はじわじわと高まっていった。エイミーは愛する息子を信じ、彼を守り抜きたいと思っているが、嫌な胸のざわめきを抑えられない。「なぜ違法の花火をロッカーに?」とルースを問い詰め、彼が以前交際していた同級生ステファニー(アンドレア・バング)から事情を聞き出そうと試みる。それでもルースへの疑念を払拭できないエイミーは、息子が自分のまったく知らない別の顔を隠し持っているのではないかと苦悩を深めていく。

ルース・エドガー

 1983年、ナイジェリア・ベヌエ州マクルディ生まれ。外交官の父親とともに渡米し、『ルース・エドガー』の舞台となったバージニア州アーリントンの高校を卒業。ウェスリアン大学で演劇の学士号、ニューヨーク大学ティッシュ芸術学校で美術の修士号を取得した。2004年からコンスタントに数多くの短編を発表。スパイク・リーが製作総指揮に名を連ねたクライム・スリラー『The Girl Is in Trouble』(15)で長編デビューを果たした。続いて『クローバーフィールド HAKAISHA』(08)の前日譚とも言えるNetflix配信のSFスリラー『クローバーフィールド・パラドックス』(18・未)の監督に抜擢され、プロデューサーのJ・J・エイブラムスとのコラボレーションを経験した。双子の兄弟であるアンソニー・オナーもフィルムメーカーとして活動している。

 1968年、イギリス・ケント州ショアハム生まれ。14歳の時にオーストラリアのシドニーに移り住み、演劇学校に通い始める。オーストラリアのTVシリーズで女優の仕事をスタートさせ、『タンク・ガール』(95)、『ラスト・ウェディング』(96)などで注目を集めた。キャリアのターニングポイントになったのは、デヴィッド・リンチ監督によって主演に抜擢された『マルホランド・ドライブ』(01)。この幻惑的なミステリー映画での演技が絶賛され、『ザ・リング』(02)、『キング・コング』(05)、『イースタン・プロミス』(07)などの話題作に相次いで出演するようになった。ショーン・ペン、ベニチオ・デル・トロと共演した『21グラム』(03)で初めてアカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、『インポッシブル』(12)でも再び同賞の候補に。そのほかの主な出演作は『ル・ディヴォース/パリに恋して』(03)、『ハッカビーズ』(04)、『リチャード・ニクソン暗殺を企てた男』(04)、『ステイ』(05)、『ファニーゲームU.S.A.』(07)、『愛する人』(09)、『ザ・バンク 堕ちた巨像』(09)、『恋のロンドン狂騒曲』(10)、『フェア・ゲーム』(10)、『ドリームハウス』(11)、『J・エドガー』(11)、『美しい絵の崩壊』(13)、『ダイアナ』(13)、『アバウト・レイ 16歳の決断』(15)、『ガラスの城の約束』(17)、『オフィーリア』(18・未)など。

 1970年、アラバマ州モンゴメリー生まれ。オーバーン大学でリベラルアーツの学士を取得。『ロング・ウォーク・ホーム』(94)のセットでインターンとして働き、ロサンゼルスへ移り住む。キャスティングの仕事を経験したのち、『評決のとき』(96)の看護師役で映画デビューを果たした。その後『マルコヴィッチの穴』(99)、『25年目のキス』(99)、『バッド・サンタ』(03)、『コーチ・カーター』(05)、『スペル』(09)などの話題作に小さな役で出演。人種差別をテーマにしたヒューマン・ドラマ『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』(11)におけるメイドのミニー役で絶賛を博し、アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞を含む数多くの助演女優賞を受賞した。セオドア・メルフィ監督の実録ドラマ『ドリーム』(16)、ギレルモ・デル・トロ監督のダーク・ファンタジー『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)でもアカデミー賞助演女優賞にノミネートされている。そのほかの主な出演作は『フルートベール駅で』(13)、『ジェームズ・ブラウン ~最高(ソウル)の魂を持つ男~』(14)、『ダイバージェントNEO』(15)、『gifted/ギフテッド』(17)、『アメイジング・ジャーニー 神の小屋より』(17)、『インスタント・ファミリー ~本当の家族見つけました~』(18・未)、『スモール・タウン・クライム-回り道の正義-』(18・未)、アップルTV配信の「真相 Truth Be Told」(19)、『ドクター・ドリトル』(20)、『2分の1の魔法』(20)など。

 1994年、ルイジアナ州ニューオーリンズ生まれ。ミュージシャンの両親のもとで育ち、音響工学やマーケティングを専攻するが、俳優業を志してロサンゼルスに移り住む。アカデミー賞作品賞に輝いたスティーヴ・マックィーン監督作品『それでも夜は明ける』(13)の小さな役でデビュー。その後は「シカゴP.D.」「NCIS:ニューオーリンズ」といったTVシリーズ、ネイト・パーカーが監督、主演を務めた歴史ドラマ『バース・オブ・ネイション』(16・未)、Netflixの『マッドバウンド 哀しき友情』(17・未)に出演する。トレイ・エドワード・シュルツ監督作品が終末世界を背景に撮り上げたスリラー『イット・カムズ・アット・ナイト』(17)では、ゴッサム・インディペンデント映画賞のブレイクスルー賞にノミネートされた。『ルース・エドガー』ではトロント国際映画祭ライジング・スター賞など数多くの賞を受賞し、英国アカデミー賞ライジング・スター賞にノミネート。再びシュルツ監督と組んだ青春映画『WAVES/ウェイブス』(19)では主演を務めている。そのほかの主な出演作は『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』(18)、『アサシネーション・ネーション』(18・未)など。

 1961年、イギリス・ロンドン生まれ。ロンドン芸術大学キャンバーウェル・カレッジ・オブ・アーツで彫刻を専攻するが、俳優を志して大学を中退した。舞台とテレビ作品に出演したのち、『殺し屋たちの挽歌』(84)でイブニング・スタンダード賞の新人賞を受賞。『コックと泥棒、その妻と愛人』(89)、『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』(90)などで存在感を高め、ロバート・アルトマン監督作品『ゴッホ』(90)では天才画家を演じた。さらにクエンティン・タランティーノ監督作品『レザボア・ドッグス』(91)、『パルプ・フィクション』(94)で鮮烈なインパクトを放ち、世界的な名声を確立した。歴史ドラマ『ロブ・ロイ/ロマンに生きた男』(95)ではアカデミー賞とゴールデン・グローブ賞の助演男優賞候補となり、英国アカデミー賞助演男優賞を受賞。『リトル・オデッサ』(94)、『海の上のピアニスト』(99)、『猿の惑星 PLANET OF THE APES』(01)、『或る終焉』(15)などでの名演技も忘れがたい。そのほかの主な出演作は『恋愛の法則』(93)、『ライアー』(97)、『宮廷料理人ヴァテール』(00)、『神に選ばれし無敵の男』(01)、『アメリカ、家族のいる風景』(05)、『コッポラの胡蝶の夢』(07)、『インクレディブル・ハルク』(08)、『ブロークン』(12・未)、『グローリー 明日への行進』(14)、『ヘイトフル・エイト』(15)、TVシリーズ「ライ・トゥ・ミー 嘘の瞬間」など。監督作に『素肌の涙』(98)がある。